追放されたハズレ聖女はチートな魔導具職人でした
第一章 辺境の不思議な幼女
フェルベーツ王国の辺境、ランダス山脈の麓にある小さな村。
街道に建てられたルベールという小さな立て看板だけが、外部の者に唯一この地の名前を示している。
村から望むランダス山脈は山頂部に万年雪の冠を被り、その山々から流れてくる清流は一年を通して身を竦ませるほどに冷たい。
しかし、この村で生まれ育った者は、この地がフェルベーツ王国の中でも指折りの貧しい村だということを知らない。
他に比較するべき対象がないからだ。
定期的に村にやってくる商人の一団は村の農作物や動物の毛皮などを買い付け、村が必要とする道具などを売るが、村と外部の繋がりはその商人たちと税を徴収するために年に一度やってくる徴税役人だけだ。
そんな村に、小さな子供の歓声が響いている。
「おにいちゃん! おねえちゃん! 待ってよー!!」
明るい茶色の髪を束ねた小さな女の子が、彼女よりも少しだけ大きな子どもたちの集団に追い付こうと走っている。
「後からゆっくり来いよ! 転んじゃうだろ!」
「そんなに怒鳴らなくてもいいじゃない! ココ、ほら大丈夫だから、走っちゃダメよ」
集団の中でも一際大きな男女が、小さな小さな歩幅で必死に追いかけてくる女の子にそれぞれ声を掛ける。