花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
一矢報いたい。このまま殺されたくない。
剣を振り上げた男に向かって、握りしめた土を投げつける。
男は怯むが、それはわずかな時間稼ぎにしかならなかった。
すぐさま男は剣の柄を握り直し、引き攣った笑い声を上げながらエミリーに刃を振り下ろす。
目をつぶり歯を食いしばる……が、覚悟した痛みは襲ってこなかった。
恐る恐る目を開き、ぼやけた視界に女性の後ろ姿を認識する。
「エミリーさん、しっかりしてください!」
聞こえた声にエミリーはホッとし目に涙を浮かべる。
この声はオレリアの一番弟子の女性、アデルで間違いない。
そしてアデルがいると言うことは……。
「おやおや伝言はしたと聞いていたが、言葉が通じなかったようだね。それにしても、私の愛弟子になんてことをしてくれたんだい。高くつくよ、覚悟しな」
続いたしわがれ声はオレリアだ。
動けないエミリーの前でアデルは刺客の男の力任せの攻撃にも押される事なく、見事な剣捌きで追い詰めていく。
苦し紛れに男が風の波動を生じさせるが、「見た目騙しにも程があるわ」とアデルはそれを上回る風の魔力で男の体を吹き飛ばした。