花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
男が倒れたのはオレリアの足元だった。
「手加減はしないよ。……ふたりともね」
にやりと笑ったオレリアは手にしている魔導具の杖の先を地面でコツンと打ち鳴らすと、空を切り裂くように雷が落ちた。
ひとつは刺客の男へ。そしてもう一つは、森の中から身を潜めて事が終わるのを待っていた御者の男へと。
オレリアは刺客の男の傍らに膝を突き、頭部に手をかざして何やら呪文を唱えている。
現れた紫色のモヤに刺客の男が飲み込まれていくのをエミリーが霞む目で見つめていると、視界にアデルの姿が映り込む。
「助けてくれてありがとう」と言いたいのに、喉がひりついて声が出せない。
「しっかりして。……毒にやられてるわね。今すぐ毒消しを」
そう言って上半身を抱え、毒消しの薬をエミリーの口の中へと流し込む。
やがて体の中が猛烈に熱くなり、と同時にエミリーは意識を手放した。