花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
髪や肌に触れながら喋れば鏡に写る幼き自分も同じ仕草をし、食い入るように見つめていると実家の屋敷に飾られていた家族みんなが描かれた肖像画を思い出す。
「三歳の頃の私、そっくりだわ」
約十三年前、まだ存命だった祖父母も含めた総勢七名が大きなキャンバスに描かれ、今でも実家の応接間に大事に飾られてある。
その絵の中で、父と母の間に収まって恥ずかしそうにしている三歳の私そのままなのだ。
「そっくりはおかしいわよね。だって私だもの」
「あはは」と鏡に写る自分へ笑いかけるも、すぐに顔がこわばっていく。
「……って違うわ、私はもう十六よ。これってどういうことなの。いったい私どうしちゃったの!?」
混乱気味に頭を抱えて喚いたからかエミリーはふらりと目眩を覚えた。
前に突っ伏するよりも先にやってきたアデルに身体を支えられ、「安静にしていなくちゃだめですよ」と微笑みかけられる。
オレリアはベッドの傍へと机の椅子を移動させ腰掛けると、エミリーの頭を優しく撫でた。
「無理は禁物だよ。なにせ矢じりに塗られた毒は、微量でも死に至る猛毒だったんだから。掠った程度でも、普通なら間違いなく死んでる」
「それならどうして私は助かったの?」