花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
「いいの。私、エミリーって名前の方が可愛くて気に入ってるから……そ、そんなことより、お兄ちゃん本当に王子様なの?」
「あぁ、こう見えてな」
「レオン様、なの?」
「レオンでいいよ」
エミリーは涙目で、笑顔のオレリアを睨みつける。
レオン王子は女ったらしって言ってたじゃない。恋人が三十人とも。そんな人じゃないわ! 話が全然違うじゃない!
心の中で雄叫びを上げ、近くにあったクッションを掴み取って、オレリアに投げつけたくなるが、エミリーは「あぁ」と小さく呻きながらふかふかのそこに顔を埋めた。
しかもそれを本人に言っちゃったじゃない! 最悪よ!
なんてことをしてしまったんだと深く後悔するエミリーの背中にレオンが手を乗せる。
「眠いのか?」と優しく声をかけて小さな体を優しく引き寄せた。
エミリーはころんと横に倒され、気がつけばレオンの膝に頭を乗せた体勢に。
小さな肩に乗っていた土兎もするするとレオンの肩へ移動する。
「おやおやエミリー。良かったねレオン王子に膝枕してもらって」
「寝ていいぞ」
優しくそう言われても、視線を上らせれば美しい顔に見下ろされている状態なわけで、眠れるわけがない。