花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
銀色のチェーンに半透明の魔石が嵌め込まれた飾りが下げられていて、それはマルシェの帰りに自分が渡した魔石だと直感する。
魔石は魔導具とセットで使わないと付与した魔力が発動しないため、このように飾りとして持っていても意味がないからだ。
私の形見として肌身離さず持ってくれていると考えると、自分を嫁に貰いたいというのは本気だったんだと胸が苦しくなっていく。
レオンは俺だともっと早く教えて欲しかった。
知っていれば、大聖女の件は断ってもあなたの申し出は喜んで受けたのにと、エミリーはしかめっ面になる。
レオンの寝顔を見つめているうちに、自分が生きていることを知らせたいと改めて思うようになり、オレリアに相談するべく彼を起こさないようにそっとベッドを抜け出した。
部屋を出て、窓からの日差しが少なくなったためか薄暗くなりかけている廊下を進み、ゆっくりと一段一段階段を降りていく。
エミリーが居間を覗き込むと、ソファーで帳簿らしき冊子をパラパラとめくっていたオレリアが顔をあげてにやりと笑いかける。
「おや、エミリーおはよう。よく寝れたかい?」
「おかげさまで」
「レオンは?」
「まだ私のベッドで寝ているわ」