花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!

オレリアは帳簿を閉じてテーブルに置くと、かけていた老眼鏡を外して一呼吸挟む。


「お前さんが寝てしまったあと、レオンがエミリーは窃盗なんてしていないって真っ直ぐな目をして言っていたよ。エミリーを陥れた奴が絶対にいるはずだ、必ず探し出して殺すとも」


レオンが信じてくれているのが嬉しくて心がじわりと熱くなる一方、最後の不穏なひと言にエミリーは不安を抱く。オレリアも表情を曇らせて瞳を伏せた。


「生きていると明かすなら同時にロレッタの悪事も話さなければならなくなる。レオンは正義感が強い子だから絶対に許さないだろうね。モースリーに戻った後、怒りのままにロレッタを斬りつけるようなことがあれば、王子としての立場は間違いなく失う」


たとえ命までは奪わなかったとしても、大聖女を刃を向けたとなれば周りが黙っていないだろう。

ロレッタを崇拝している者たちがたくさんいるのだから、それこそ身分の剥奪を求められてもおかしくない。


「或いは、レオンの動きにロレッタが先に気付けば、返り討ちに遭う可能性もある。あっちには騎士団長がいるからね。下手すればレオンが命を失うかもしれない」

「それだけは絶対に嫌よ! ……私、耐えられないわ」


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