花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
知り合って三年、彼と親しくなれていると思っていたのに、心を許していたのは自分だけだったのかとエミリーは涙ぐんだ。
「なにか理由があるのだろうけど、これまでずっと私を騙していた事実は変わらないわ」
悲しみと憤り、悔しさに寂しさで胸が苦しくて仕方ない。居た堪れなくなり自分の腕を掴む彼の手を振り払おうとしたが、その手は決して離れなかった。
「本当にすまない。前々からちゃんと話すつもりではいたんだ。信じて欲しい」
「……本当に?」
「あぁ。エミリーに俺のことをもっとちゃんと知ってもらいたい」
掴み直したエミリーの手を自分の心臓へと押し当て、彼が真剣に、そして切なく請い求める。
それは古くからある騎士が君主に忠誠を誓う時にする行為である。
一般の人々の間でも誠心誠意の謝罪する時に用いられていたが、しかし専ら最近では男性が愛しい女性に対して愛の告白をする時にする所作となっている。
一気に気恥ずかしさが戻ってきて、思わずエミリーは周囲を見回す。
案の定、通りすがりの幾人はエミリーたちに視線を向け、その目は揃って興味津々な輝きを放っていた。
呆れ顔なのは、重い荷物を抱えたまま待たされている眼鏡の男性くらい。