花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
告げた後、眼鏡の男性が顎で指し示した方へエミリーもつられて視線を向けると、確かに城の方からこちらにやって来る王立騎士団員の紺色の制服を身に纏った三人の男性がいた。
「すまないエミリー。日を改めた方が良さそうだ。後で必ず連絡する」
彼のことを知りたい。けれど、このまま彼と一緒にどこかへ消えたりしたら、それこそ聖女クラスの三人にあらぬ噂を立てられてしまうだろう。
彼の言うとおりにしておくべきだと、エミリーは頷き返した。
「俺はここで見送るから、このままエトリックスクールの中へ」
「わかった。今日はありがとう。連絡待ってるね。絶対よ!」
彼に手を振り、名残惜しさを振り切るように背を向け歩きだす。
至る所から注目を浴びている気がして、もしかしてフィデルと名乗っていたあの彼はモースリーの街ではちょっとした有名人なのかしらと想像を巡らせる。
強いし、何よりあの整った顔。そうであっても少しもおかしくないと心の中でひとり納得しつつ、突き刺さる視線に居心地の悪さを覚えながらエトリックスクールに向けて真っ直ぐ進んでいく。
途中、野菜の入った網かごを持った女性たちから「愛の告白をお受けしたのかい?」とやや緊張の面持ちで話しかけられる。