花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!

エミリーはそれに苦笑いで答えるだけで足は止めない。女性たちの後ろに聖女クラスの三人が並んで立っているからだ。

不満げに自分を見ている三人を早々に視界から外し、一気にその横を通り過ぎていった。

やっとの思いで門番の元に辿り着き、声をかける。敷地内へ入るその前に、エミリーは我慢できず振り返って彼の姿を探す。

ちょうど彼と眼鏡の男性の前で騎士団員たちが立ち止まり、ふたりに向かって敬礼をした。

彼らはいったい何者なのだろうとエミリーは思いを巡らす。

フィデルと名乗っていた彼は強い魔力を持っているけれどただの学生だ。

その保護者的立場という認識でしかなかった眼鏡の彼が、もしかしたら立場のある人なのかもしれない。

ふたりに対して慇懃な態度を崩さない騎士団員の姿を見ていると、間違っても眼鏡の彼は冒険者などではないと思えてくる。

なぜなら騎士団は王族の指揮下にあり、数ある職業の中でもエリート揃いの上級職に位置している。

少なくとも、ギルドで登録さえすれば誰でもなれる一介の冒険者に対してへりくだるような態度は取らないはずだ。

それに、フィデルと名乗っていた彼も、いくら学生だと言っても凄腕だから騎士団員からも一目置かれている可能性もあるわねとエミリーがあれこれ考えていると、その彼がフードの縁をずらし上げた。

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