花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!

しっかりと美麗なその顔が見えたことで互いの視線が繋がる。微笑みかけられてドキリと胸を高鳴らせつつ、エミリーも微笑み返した。

本当の名前を教えてもらうその時までフィデルと呼び続けようと決める。

「またね、フィデル」とそっと囁きかけてから再び彼に背をむけ、開けてもらったエトリックスクールの門扉をくぐり抜けた。

今度はいつ会えるだろうか。

先の予定を心待ちにしながら寮に向かって進んでいくと、パタパタと足音を立てて前方からエトリックスクールで一番仲が良いリタが駆けてきた。


「エミリー! 無事?」

「ぶ、無事だけど。そんなに慌ててどうしたの?」


まさかリタまでも物騒な話をするつもりなのではとエミリーは身構えたが、彼女はここまで全力で走ってきたらしく息切れでなかなか喋り出せなかった。

リタは同い年のクラスメイトで、寮の部屋も一緒。身長はエミリーよりわずかに低く、肩にかかる長さの髪は綺麗な蜂蜜色。

出身は隣国のユギアックだが、父親の母校であるエトリックスクールで学びたくて隣国からやって来たしっかり者の女の子だ。

徐々に呼吸も整い出し、ようやくリタは話し始める。

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