花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!


「エスメラルダと会わなかった?」

「会ったわ。いつものふたりと一緒だった」


好き勝手に噂を広められてしまう前に、リタにはきちんと話をしておいた方がいいかもしれない。

フィデルのことをどう説明しようかとエミリーが頭を悩ませていると、リタが不満げにため息をついた。


「ラウンジを通りかかったら、あの取り巻きふたりがエスメラルダにエミリーの話をしてるのが聞こえたの」

「私の話?」

「マルシェで商売してるかもしれないから冷やかしに行きましょうよって。頭に来て止めようとしたんだけど鼻で笑われて。今思い出しても悔しい!」


リタはエミリーの腕を掴み、「本当に納得いかないわ!」と怒りの声をあげる。


「外出には前もって申請が必要でしょ。特別な理由がない限り当日の申請は許可されない規則になっているし、だからどうせエミリーの邪魔をしに行けるはずがない……って思ってたのに、大聖女の孫ってだけで贔屓されすぎよ!」


話を聞くと、エスメラルダが「マルシェに買い物に行きたい」と教務に話をするとすんなり三人揃って許可がおりたようで、それなら私もとリタは窓口に向かったが「買い物程度では許可しかねます。規則ですから」の一点張りだったらしい。

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