花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
「聖女クラスの教師はもちろん、エトリックスクールの上層部も大聖女様に頭が上がらない人ばかりっていうのは、本当だったみたいね」
呆れたように気持ちを吐露したリタに、エミリーは頷いて同意する。大聖女から多額の寄付をもらっているし、そうなるのは当然の流れかもしれない。
「……あっ、噂をすれば」
リタが門扉の方へと目を向け、ムッと眉根を寄せた。エミリーも肩越しに振り返り、見えた三つの姿に口の端をピクリと引きつらせる。
エスメラルダが取り巻きのふたりを引き連れて、あっという間にエミリーの前までやってきた。
苛立ちを隠そうとしないままエミリーを見つめるエスメラルダに、リタが「なにか用?」と冷たく問いかける。
エスメラルダはじろりとリタを睨みつけるだけで、取り巻きの片割れが「あなたに用はありませんわ」と代わりに言葉を返した。
「あなた、先ほど一緒にいた男性と何を話していらしたの?」
エスメラルダの声は憤りでわずかに震えている。
先ほど一緒にいた男性とはフィデルのことで合っているだろうか。そう確認したくても嫌な緊張感に阻まれてエミリーは口ごもる。