花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
クラスメイトはムッと眉根を寄せて遠ざかっていく四つの背中に睨みつけながら、「それもそうね」とリタに同意する。
しかし三人並んで歩き出すと「でも」とつまらなそうにため息を吐いた。
「華樹祭に関しては、聖女クラスの人たちが羨ましい。あーあ、私たちも招待してくれたら良いのに。大聖樹を間近で見てみたいわ」
それだけ言って、「それじゃあ教室で!」と彼女はずっと先を歩いているクラスメイトの元へと駆けて行った。
大聖樹は城の敷地内の北側に広がる林の中にある。
裏庭とも呼ばれるそこは塀で囲まれ厳重に警備されているが、華樹祭中は裏庭の中程までなら誰でも自由に出入りでき、遠くからではあるが大聖樹を見ることができるのだ。
しかし今年は特別に、聖女クラスの生徒に大聖樹のすぐそばまで行ける許可が降りたらしい。
聖女と聖樹は切り離せない関係であり後学のために聖女クラスの生徒を全員招待することにしたと表向きでは言われているが、実際は大聖樹を管理する大聖女の孫がいるため特別待遇がとられたという話だ。
ちょうどこの前の休日、マルシェに行く前に教師から呼び出された時もその話をしている。