花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
彼もエミリーに聖女クラスへの編入を勧める教師のひとりで、オレリアの隠れファンでもある。
その笑顔が「あなたも必ず見に行ってくださいね」と語りかけているかのようで、エミリーは思わず口元を引きつらせた。
自分たちまで招待してもらえたのが嬉しくて、みんなどことなくそわそわしたまま授業を受けていたが、最後に「次回の授業でレポートを提出してもらいます。薬草を三つ選び、関する情報を詳しくまとめること」と告げられ、一気に現実へと引き戻されていった。
授業が終わり、エミリーはバッグから取り出した申込書を手にクラスメイトの男性の元へ向かう。
「ケビン。締め切り日当日の提出になってしまってごめんなさい」
話しかけると同時にケビンが明るい茶色の髪をわずかに揺らしてエミリーへと顔をあげ、笑みを浮かべた。
「あぁ。いいよ。こっちこそしつこくしまってごめん」
彼は薬師クラスの一学年代表を務めている。
この前の休日、校舎を出てマルシェに向かっている途中で声をかけてきたのも彼で、用件は今手渡した長期休暇中の王立薬師院への研修申し込みについてだった。