花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
エミリーは「ちょっと待ってよ!」と声をあげると、机の上に置きっぱなしだった自分のバッグを掴み取り、「私が鈍いって、どこが?」と納得いかない様子でリタを追いかけた。
廊下で置いつき、肩を並べて歩き出す。さっきのはどう意味かとエミリーの問いかけをリタは「そんなことより」と受け流して、話題を変える。
「楽しみよね、華樹祭。私たちまでお城の裏庭に入れるなんて」
「まぁ確かに滅多にないチャンスよね」
「ついでにレオン王子のお姿もご近くで拝見できたら最高だわ。ものすごく素敵な方なんでしょう? おまけに剣術も素晴らしいって」
「私は見たことないけど、そうらしいわね」
「楽しみだわ」と頬を高揚させ、期待で胸を高鳴らせているリタを横目でちらりと見る。
レオン王子が女ったらしだという話は伏せておいた方が良いと判断し、エミリーは真顔で口を閉じた。
素敵な方で真っ先にエミリーの頭に思い浮かぶのはフィデルだ。
今頃彼もモースリーアカデミーで勉学に励んでいるのだろう。
約束を忘れていないだろうか。どんな手段で私に連絡をくれるのか。レオン王子なんかよりも彼に会いたい。