花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
エミリーがほんの少し寂しさを覚えた時、前方で咳払いが響いた。
ハッと顔を上げれば、そこにはエスメラルダを含めた聖女クラスの生徒四人がいた。
またかと思いつつも、聖女クラスの授業を受け持つエミリーの最も苦手な女性教師マリアンもいるのに気づいて、エミリーはこっそりとため息をつく。
咳払いしたのはその女性教師だったようで、うんざりとした口調で話しかけてくる。
「華樹祭にお呼ばれされ、浮かれているようですね。聖樹に祈りを捧げるために行くのであって、レオン王子に会いに行くわけでは決してありません。そのような言動は慎みなさい」
嗜められ、リタは「すみません」と謝りつつ、不満げな顔を俯かせる。
「国王様のお情けで、あなた方も大聖樹を間近で見られるのです。感謝の気持ちを持って、節度ある態度を。エトリックスクールの名に泥を塗ることがないように」
小言を続けるマリアンの後ろでエミリーとリタを見ているエスメラルダたちは、良い気味よといった風にニヤニヤと笑みを浮かべている。
その様子にエミリーの中で苛立ちが湧き上がる。堪えはしたがわずかに表情に出てしまっていたらしく、すぐさまマリアンから注意が飛んでくる。