花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
「エミリー・メイルランド、なんですかその顔は。私の言葉が不服ですか?」
「いっ、いえ、そんなことは」
不服なのは後ろにいる生徒たちに対してであるが、エスメラルダがマリアンのお気に入りである以上、正直に言ったところで火に油を注ぐだけである。
マリアンは「ふんっ」と鼻を鳴らしてから、生徒たちを引き連れて歩き出す。
エミリーとリタは道を開けるように横へとずれて、マリアンに対して軽く頭を下げる。
視線を足元に落としたまま身動きを取らずにいると、すれ違いざまにマリアンがひと言投下した。
「生意気な態度がオレリアそっくりで、不愉快だわ」
それを聞いて、オレリアを尊敬しているリタは勢いよく顔を上げる。今にでもマリアンに向かっていきそうな不満げな彼女の腕をエミリーは慌てて掴んで引き止めた。
近くの教室へと彼女たちが入っていくのを見届けた後、掴んでいたリタの腕を離し、張り詰めていた気持ちを逃すようにエミリーは大きく息をついた。
「そっくりなのはエスメラルダとあの教師の方よ。いつ見ても本当に感じ悪いわね」
リタのぼやきにエミリーは小さく頷いて同意し、「行きましょう」と階段に向かって廊下を進む。