花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
こんな状況でエミリーが聖女クラスへの移動なんて考えられるはずもなく、逆にこれからの学園生活を充実させるためにはいかに聖女クラスのメンツとは関わりを持たずにやり過ごすかが重要だと思い始めていた。
聖女なんてお断りだわ。
エミリーは思いを新たにし、一気に階段を駆け降りていった。
一週間後、まだ静かな朝の街並みの中を聖女クラスに続いて、エミリーたち薬師クラスの一年生たちも列を成して城へと向かって進んでいた。
昨日は二年、前々日は三年が、そして今日は一年生が城へと向かう日となっている。
城の内部へ入れる興奮と、大聖樹を間近で見られる喜びに胸を高鳴らせて、この時ばかりは薬師クラスも聖女クラスも関係なく、どの顔も同じように期待で輝いていた。
そんな中、エミリーだけは流れに沿って歩きながら、気もそぞろに忙しなく歩く街の人々へと視線を走らせている。
もしかしたら、アカデミーに向かう途中のフィデルと偶然すれ違うかもしれないと考えての行動だが、願いは虚しく彼らしき姿は見つけられない。
あっという間に城に到着し、立派な城門をぞろぞろ通り抜けていく。
途中、警護に当たっている騎士団員へと何気なく目を向け、エミリーはあっと小さく声を発する。