花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
そこに立っていたのは、フィデルとエトリックスクールの前で別れたあの時、やって来た騎士団員だった。
騎士団員もエミリーに目を止めて数秒後、覚えていたらしく僅かに目を輝かせて軽く頭を下げた。
このまま騎士団員の元へ飛んで行ってフィデルのことを尋ねたい。
そんな気持ちでいっぱいになるが、自分勝手に列を離れたらマリアン先生の怒りに触れるのは明白なためぐっと堪えた。
庭には綺麗に剪定された低木が並び、女神を象った彫像もいくつも点在している。
日が当たれば輝いて見えるほど城壁は白く、窓もたくさんある。
ところどころ嵌め込まれているステンドグラスはとても優美で、うっとりとため息が出てしまうほど。
そして何より目を引くのは、城の上部にそびえる見張り場を兼ねた塔で、屋根の先端は天を突き刺すかの如く鋭く、見る者を圧倒する。
エミリーもモースリー城の荘厳さに魅了されつつ、生徒に続いてゆっくりと城内へ足を踏み入れた。
裏庭へ向かう前に大広間に通され、天井のシャンデリアを見上げていると、ビゼンテが手を叩いた。
「みなさん、お静かに。エイヴァリー国王がいらっしゃいます」
厳かに響いた声音に、興奮しざわついていた生徒たちが一気に静まり返る。