花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!

やがて生徒たちが入ってきたものとは別の大広間の奥の扉が、脇に控えていた騎士団員によって開けられた。

そこから大広間へと入ってきた姿に、エミリーは思わず息をのむ。

ひょろりと長い体躯、黒字に金の細かい装飾が施されたジャケットは煌びやかで目を引く。

黒髪に白髪が多く混ざっているものの、整った顔立ちに綺麗な碧眼はとても力強く輝き、五十代と聞いているがそれよりも若々しく見える。

渋く素敵なエイヴァリー国王から、エミリーは目を離せない。


「国王陛下、とっても素敵ね」


隣から惚け気味に聞こえてきたリタの呟きに、エミリーはこくこくと繰り返し頷く。美形揃いとは噂に聞いていたが、本当に魅力的である。

国王をじっと見つめていると不意に既視感にとらわれ、エミリーは「……誰かに似ているような」と首を僅かに傾げる。

エイヴァリー国王は上座で足を止めると生徒たちへ体を向け、口元に笑みをたたえた。


「ようこそ、我がモースリー城へ。私たちに多くの恵みをもたらす大聖樹は遷移の時期に差し掛かっている。そんな折り、エトリックスクールにもロレッタの孫を始め、優秀な人材が多く集まったのもまた運命なのかもしれない」


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