花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
ネックレスやイヤリングの宝石も粒が大きく、そのギラギラした姿に「お変わりなさそうで何よりです」とエミリーは苦笑いする。
オレンジ色の髪を三つ編みにし、ふくよかな体型のオレリアは商売人で、プランダの田舎町より東に位置する、ソリンドル地方で一番大きな町ヘンリットで魔法薬の店を構えている。
魔法薬を作れる父バリーと話をしに、彼女はたびたびメイルランド邸にやって来るため、子どもの頃から知っている仲である。
「……それにしても、スクールでの生活はどうだい? 危険な目に遭っていたりしないだろうね」
「や、やだ。スクール内で危険な目に遭うわけないじゃない。……も、門番だってちゃんと立ってるし、警備の人もたまに歩いてるし」
笑い飛ばそうとするが、オレリアが自分の背後を冷ややかに見つめ続けているため、エミリーも困惑げに振り返った。
令嬢たちに田舎者と小馬鹿にされても、命を狙われるようなことはない。オレリアの目にはいったいなにが見えているのだろう考え、エミリーはわずかに怖くなる。
「ねぇ、オレリア、なにか不審に感じることでもあるの?」
「……いいや。私の勘違いだろう、気になさんな。さて、露店の様子を見にいくとするかね」