花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
いつの間にか自分の後ろに立っていたビゼンテ先生が立て続けに問いてくる。
確かに大聖樹の荘厳さに圧倒されたが、嬉々として自分を見つめるビゼンテにそれを認めるのは少し悔しく、後々面倒なことにも繋がりそうで、エミリーは苦笑いするにとどめた。
すると、ビゼンテの横にすっと並び立ったテド院長が呆れ顔で口を挟む。
「おいおいビゼンテ、生徒が困ってるぞ。それに彼女は薬師クラスだろ? 聖女じゃなくて立派な薬師になるよう指導しろ」
「もちろん薬草学を教える身としては薬師となって活躍して欲しい。しかし、エミリーは聖女として十分に通用する素養があるんだ、見逃せない。だからテドは黙っててくれ」
「この顔はどう見ても乗り気じゃないだろ、すっぱり諦めろ。そしてぜひ、卒業後は王立薬師院へ」
お互い気兼ねなく言い合っている様子から、仲の良さがうかがえる。
最後にしれっと付け加えられた勧誘の文言にエミリーが再び苦笑いすると、テドは驚きで目を大きくさせた。
「なんだその反応は。薬師院は避け案件か? そこまでブラックじゃないぞ」
「い、いえ。私は卒業後の働き先が決まっているので、反応が悪くてごめんなさい」