花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
「あぁそうか、そういうことか。ちなみに働き先とは?」
「……オレリア商会です」
エミリーから飛び出した言葉にさらにテドは目を大きくさせて、確認するかのようにビゼンテを見た。
先ほど大広間での挨拶時の気怠そうな印象とはまるで違う彼に、なんだか面白い人だとエミリーはこっそり笑みを浮かべた。
「今年オレリアの秘蔵っ子が入学したと聞いていたが、それが君か! エミリーと言ったね、婆さんまだ元気か?」
「テド、お前!」
「婆さん」呼びをしたテド院長を、オレリアを慕っているビゼンテ先生が怖い顔で睨みつけた。
言い方はちょっぴり意地悪だったが、でもそこに友好的な気持ちがしっかり現れていたため、エミリーは笑顔のままで「えぇとっても」と答えた。
「今日はなんだか面白い日だな。大聖女の孫とオレリアの秘蔵っ子に会えたし、あんな噂があるからか城の人たちもいつもと様子が違うし、もしたら聖女遷移も起こるかもな」
テド院長は背後をちらりと気にしつつ、しみじみとそんなことを口にする。
つられてエミリーも歩いてきた小道へと視線を向け、小首を傾げた。