花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
それによって起こした風に乗せて、咲かせていた黄色い小花をすべて飛散させる。
黄色が一気に目前まで迫ってきて、エミリーは「きゃっ!」と小さく叫んだ。
ぎゅっと目を閉じ、己の身を守るように背中を丸めて体を小さくさせる。
「エミリー、大丈夫か?」
数秒後、ケビンに声をかけられ、エミリーは恐る恐る目を開け、ギョッとする。
まるで一本の黄色の道で真っ直ぐ繋がるかのように、大聖樹からエミリーに向かって地面に黄色の小花が落ちていてたからだ。
これはいったいなんだろうと不思議に思った所で、エミリーの耳がテド院長の声を拾う。
「花が散った。聖女遷移の始まりだ。しかも……」
言葉が途中で途切れたため思わず肩越しに振り返ると、顔色を失うほど驚愕しているテドと目が合った。
そこで、エミリーも今目にしたのが聖女遷移の始まりの知らせだったのかと驚き、胸を高鳴らせる。
そこに偶然居合わせるなんて幸運だわと嬉しさに口元を緩ませ、吸い込んでしまった花粉でくしゃみを繰り返した。
テド院長を含め、自分を見つめる大人たちが一様に青ざめていることなど一切気づかぬまま、エミリーは鼻をぐずらせながら黄色の道の先にある大聖樹を見つめ続けた。