花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
「そういえば、さっきビゼンテにエミリーのことを聞いていたな。なんの確認だったんだ?」
「そのご質問にはお答え致しかねます」
先程、生徒たちと距離を置いた後、まず侍従長はビゼンテに「メイルランド辺境伯のご令嬢、エミリー・メイルランドはここにいらっしゃいますか?」と尋ね、その後、人柄や成績に関しての質問が続いたのだ。
侍従長にすっぱり拒否されてテド薬師長がつまらなさそうに「あぁそうですか」といた瞬間、木立の暗がりから小道へとフィデル副団長の名を拝借していたあの美麗な彼がふらりと出てきた。
「どうせすぐ知ることになるんだから、今ここで教えてやれば良いのに」
騎士団員のふたりは気配なく現れたことに驚いた後、その姿にホッと息をつき、フィデル副団長に続いて胸元に拳をあてて敬意を示した。
テド院長も慌てて彼に対して深く頭を下げる。
美麗な彼はそれに軽く手をあげて答えつつ、侍従長へ歩み寄っていった。
侍従長も一礼してから口を開く。
「モースリーアカデミーへ同行すべく待機していたそこの騎士団員ふたりが、いつの間にか部屋からあなた様の姿が消えていたと半泣きで私の元へやって来ましたよ。フィデル副団長に聞けば、それならきっとここでしょうと。心配させないでください、レオン王子」