花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!

飛び出した小言に彼、エイヴァリー国王の二番目の息子であるレオンは微笑みを浮かべた。


「エミリーが来ると分かっていて会いに行かない理由はない」


それを聞いてテド院長は大きく目を見開き、昨日、薬師院で働く若い女性たちがこの世の終わりかのように泣き喚いていた姿を思い出す。


「城下は、レオン王子に恋人がいて、それがエトリックスクールの学生だという噂で持ちきりですけど、本当の話だったんですね」


テド院長からぽつりと吐き出されたひと言に、レオンは「正確にはまだ恋人ではないけど」と曖昧に笑う。

あの日エミリーとマルシェで偶然出会い、その帰り際にレオンは人目を憚らず求愛を意味する行動をとった。

フードを目深に被っていても美貌までは隠しきれない。

その場に居合わせた町民たちの多くはその男がレオン王子だと気づいていて、彼らが立ち去った後、ちょっとした騒ぎとなったのだ。

騒ぎは城まで届き、国王に呼び出され説明を求められたレオンは『想いを寄せている女性がいる』とはっきりと告げたため、さらに城は大騒ぎとなる。

息子の意中の相手がエトリックスクールの薬師クラスの生徒でメイルランド辺境伯の娘だと分かったところで、ちょうど大聖樹の見学が予定されていたのを思い出し、国王はすぐさま聖女クラスだけでなく薬師クラスも城に呼べと命令を下したのだ。

< 75 / 286 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop