花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!

レオンは侍従長に向かって得意げに笑ってみせた。


「さっき、引率していた教師にエミリーのことを聞いていたな。俺が言った通り優秀だったろ?」

「はい。大聖樹に選ばれるほどの方ですから、優秀なのは間違いないでしょう」

「あぁ優秀で朗らかで、おまけにとっても可愛らしい」


ついでのように惚気たレオンに侍従長は渋い顔をし、「だからと言って、アカデミーに遅刻して良い理由にはなりません。王子たるもの国民の模範となるべき行動を……」と小言を言い始める。


「次の大聖女が、現大聖女と犬猿の中であるオレリアの秘蔵っ子ってだけでも面白いのに、王子と恋仲でもあるだなんて。本当に今日は面白いことばかりだ。久しぶりにオレリア師匠に会いたくなったな」


ぶつぶつと小言が続けられる傍で、テドは懐かしむように独り言を呟く。しかし急に真剣な顔になりレオンへと体を向けた。


「でも先程本人と話をしましたが、聖女には興味がなさそうでしたね」

「あぁ。オレリアのような商売人になるのが彼女の夢だから」

「確かに、卒業後はオレリア商会で働くと言っていました。珍しい方ですよ、聖女になれる素質があると分かれば、収入が不安定な商売人より聖女として貴族に雇ってもらうのを選ぶだろうに。……まぁ、大聖女となれば話は別かな。レオン王子の近くにいられるのだから大喜びしそうだ」


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