花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
テド院長はレオンの返答に納得したように頷き、自身の考えを述べた。
一方、オレリアのせいでレオン王子は女ったらしだとエミリーに勘違いされているのを知っているフィデル副団長は小さく笑ってしまい、レオンにじろりと睨みつけられた。
「大聖樹に選ばれてしまった以上、エミリー様には夢を諦めてもらう他ありません。ひとまず私は国王様に報告しに行きます。フィデル副団長、すみませんがレオン王子をアカデミーまで、必ず」
侍従長からのお願いを、フィデル副団長は「承知しました」と背筋を伸ばして受け止める。
そしてテド院長も「私もそろそろ薬師院へ戻ります。失礼いたします」とレオンに頭を下げ、侍従長と共に歩き出す。
フィデル副団長は遠ざかっていくふたつの背中を見つめながら、小さく息をついた。
「大聖女ロレッタは今ごろ不満を爆発させているでしょうね。孫に自分の跡を継がせる気でいましたから」
「そうだな。余計なことを考えなければ良いけど」
レオンが危惧しているのは、先日エミリーを監視していた危険な気配の存在だ。
それは大聖女ロレッタが護衛として自分のそばに置いている大柄の剣士の男の気配そのものだった。