花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
そしてこの裏庭の中でも、ロレッタを崇拝している騎士団長の直属の部下が不穏な動きをしているのをちらりと見かけている。
レオンは顎に手を当て瞳を伏せる。記憶から掘り起こすのは、子供の頃、城の書庫の片隅で埃をかぶっていた大聖樹に関する文献の内容。
それには、大聖樹に選ばれたら絶対で、拒否すれば破滅へと繋がってしまうと書かれていた。大聖樹が他の聖女を受け入れなくなるためだ。
本当にそのような状況下に陥れば、いくら大聖女とは言え、自分の孫を推し通すことなどできるはずもない。
しかし、とある条件下では大聖樹による選出が無効となる場合があるとも古びた本には書かれていた。
それが確かなものだとしたら、危惧すべき問題だ。
嫌な予感に息苦しさを覚えて顔を歪めたレオンへと、フィデル副団長が冷静に報告する。
「城内では、あの大柄の男がロレッタの警備についていませんでした。そのため部下にエトリックスクールまでエミリー様を見送るよう指示しました」
「恩に着る。今後騎士団から、エミリーの警護としてエトリックスクールに派遣できるか」
「わかりました。調整が済み次第、警護に当たらせます」