花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
「私も見たかったわ。エミリーの愛しの彼を」
浴室で、エミリーは裏庭での出来事をリタに話した。
木の陰に彼がいたことを知り、あの時エミリーの様子がおかしかったことがやっと腑に落ちたとリタは納得した。
「愛しいとか、彼はそういうんじゃないわよ」
否定するが、湯上がりが原因ではない頬の熱さを、エミリーはしっかり感じていた。
「そうだわ。その時彼にもらった物があるの」
エミリーは足を止め、部屋に置かずに持ち歩いていたベルベッドの小さな巾着をナイトドレスのポケットから取り出す。
「わぁ! 何が入ってるの?」
興味津々なリタに手元を覗き込まれながら、エミリーは慎重に結ばれている紐をほどき、巾着の中の物を手の平の上に出した。
「素敵」
入っていたのは蝶の飾りがついた髪留めだった。
羽や体の部分は青みどり色の宝石で散りばめられていて、エミリーの手の中できらきら輝いている。
「学生なのにそんな高価なものを贈れるほど稼げるなんて、本当に強いのね」
リタは感心した様子で蝶の髪飾りを眺めていたが、首を傾げて不思議そうな顔をする。