花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
「でもその彼、どうやって裏庭に入ったのかしら。入り口は私たちも通ったあの一箇所だけなんでしょ? あそこには騎士団員が立っていたし、簡単に入れないわよね」
「……騎士団の副団長と知り合いだから?」
言いながらエミリーも疑問を深める。彼と会ったのは、フィデル副団長がやって来る前だ。
それに副団長と仲が良いと言うだけで、厳重な警備体制がしかれているあの場所に入らせてもらえるだろうか。
「エミリーの意中の相手は一体何者なのなしら」
リタに揶揄われ、エミリーは「だから違うってば!」と膨れっ面になる。
否定しつつ蝶の髪留めを巾着の中へ戻そうとし、まだ中に紙のようなものが入っていることに気がつき引っ張り出した。
「何かしら」
四つ折りになった小さな紙をそっと広げて、ほんの数秒呼吸を忘れる。
『私の想いはあなたと共に』
横から紙を覗き見たリタも顔を赤らめて「きゃーーっ!」と黄色い声をあげた。
「これって、いつでもエミリーのことを想ってるってことよね! つまり大好きってことよ!」
「そ、そうなのかな」
「特別に想っていない相手にこんな手紙渡さないわ。次会った時、恋人になって欲しいって言われるかも。そうしたらもちろん、「はい」って答えるでしょ?」
「……そ、そんなのわからない」