花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
彼女はきょろきょろと室内を見回し、窓から外を確認した後、戸口から動けないエミリーとリタへ振り返り呆れ顔をする。
「誰もいないじゃない。寝ぼけて何かと見間違えたのね」と結論づけ、「もう寝るから静かにしてね」とひと言残してすたすたと自分の部屋に戻って行った。
すると、廊下に出てきていた他の生徒たちも、「静かにしてよ」と口々にぼやきながらそれぞれの部屋へと引っ込んでいく。
「失礼ね、寝ぼけてなんてないわ。今の男はいったいなんだったのよ。エミリー大丈夫?」
リタに顔を覗き込まれ、エミリーはなんとか頷き返す。
オレリアや美麗な彼が言っていたことは本当だった。
私は誰かに狙われていると、エミリーは今やっと事の重大さを理解する。
物色している所で鉢合わせし、ひとりなら口封じをしてしまおうと考えた可能性もある。
しかしそれよりも、男は目があったことでエミリー・メイルランドだと認識し、殺意を持って剣を抜いたように思えたのだ。
オレリアや彼の言葉にもっと耳を傾けておくべきだったと、エミリーは後悔を募らせる。
室内を明るくし、しっかりと窓とカーテンを閉めはしたが、震えは止まらない。
エミリーはすがるようにベルベッドの巾着をしっかり握り締め、しばらくの間、リタと身を寄せ合い続けた。