花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
三章
大聖樹の見学、そして不審な男との遭遇から十日が経った。
魔法薬の本日の授業もそろそろ終盤に差し掛かった頃、エミリーは完成した複合魔法薬の入ったフラスコを両手で持って、ふくよかで笑顔の可愛らしい女教師が待つ教卓へと進み出た。
「エミリー、もうできたのですか?」
「はい。お願いします」
配合が上手くいっているといいけどと少しばかり不安を感じながら、持っていたフラスコを女教師へ手渡す。
女教師は受け取ったフラスコを陽光にかざして色を見たり、鼻に近づけ匂いを嗅ぐ。
その様子をエミリーだけでなく、すり鉢で薬草をすり潰したり、抽出した液体を光の魔力を込めて作った回復薬と混ぜ合わせたりしていた生徒たちも各々の作業の手を止めて様子をうかがう。
状態を確認していた女教師が「うん」と頷いたことで第一関門突破。
続けて、教卓の上に置かれていたカゴにかかった布がめくられる。
中に横たわっているのは耳と尻尾の長いモフモフした茶色い毛並みの小動物系の獣、土兎。
授業前に、女教師がエトリックスクールの薬草畑で負傷している土兎を見つけて保護したらしい。