花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
朝になれば、カルバード学長やビゼンテ先生もやって来て、エミリーたちは再び説明をすることに。
そこへフィデル副団長を先頭に騎士団員が五名ほどやって来て、「本日から我々騎士団がエトリックスクールの警護を担うこととなりました」と告げた。
カルバード学長が昨夜のことを話せば、フィデル副団長はわずかに顔を青ざめさせ、「その男を必ず探し出し、捕らえます」と力強く言い切ったのだった。
学園内で騎士団員が警備し始め、とても心強く感じているというのに、……自分に迫ってくる気配や、物陰に潜んでいるかのような人影を目にすると、どうしてもあの時感じた恐怖が蘇ってきて体が動かなくなる。
「エミリー、大丈夫? 顔色悪いよ。少し休んだ方が良いかも。寮の部屋に食事を運んでもらうように言おうか?」
「ありがとう。ちょっと過敏になってたみたい。けどもう平気よ」
「そう。それなら良いけど」
部屋にいても窓が風で揺れただけで怖くなる時がある。それなら大勢の中に紛れていた方が気持ちも楽だ。
エミリーは力なく笑みを浮かべながら再び歩き出し、遠くを見つめて思いを馳せる。
偽りの名を語っていたあなたに、いつ会えるだろう。
フィデル副団長から不審者の話は聞いているだろうか。私を少しは心配してくれているだろうか。