花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!


「私、王立薬師院院長テド・オーモンドが国王陛下に進言し、承認を得てやって参りました。エトリックスクール学長カルバード・デネットに、エミリー・メイルランドの早急な聖女教育の開始を願いたい」

「ちょっと待ってください。どういうことでしょう」

「どうもこうもない。先日、君は大聖樹による選出を受けたじゃないか。さっさと学び始めるに越したことはない」


エミリーが慌てて口を挟むと、テド院長はさっきまでの凛々しさはどこへやら、いつもの砕けた調子で理由を説明する。


「わ、私がですか?」

「そうだ、君がだよ。驚きだ」


ひとり悠々とソファーに座っているカルバード学長からちくりと棘を刺され、エミリーは言葉を飲み込む。


「大聖樹での一件は私も聞いた。君の父親は優秀な男だ。君自身もまた優れた才能を持っていると聞いている。しかしそれらは薬師としての話だろう。聖女としての一歩も踏み出していない君が、大聖樹に選ばれる? あのロレッタ様でも起きなかったことだぞ、正直言って信じられん」


信じられないのは私だって同じだと言い返したくなるが、カルバード学長の迫力に気圧され何も言えないまま、エミリーはただ拳を握りしめた。

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