【完結】ドSな救命医に見初められ、婚姻関係を結びました。
⑭新しい仲間は、無口です
「……横井さん」
「楠先生……」
あの患者さんの奥さん、横井乃里子さん。未だに意識が戻らないのに、毎日お見舞に来てくれる。
献身的な奥さんだけど、きっと辛いと思う……。
「毎日、来てくださってるんですね」
「主人は……。主人はなんで、こんなことになってしまったんでしょうか」
意識不明の患者さん、横井拓也さん。二週間前にすすきの総合病院より受け入れ要請があり、楠海浜病院で受け入れた。
だけど搬送されてきた時にはすでに横井さんは意識不明で、頭部にも外傷を負っていた。処置をして何とか一命を取り留めたものの、二週間経った今でも意識は戻らないままだ。
そして横井さんの奥さんである乃里子さんは、この二週間毎日、横井さんのお見舞いに来ているのだった。
「……横井さん、辛くなったらいつでも言ってください。休んでも、いいんですよ」
そう声をかけても、横井さんはいつも「大丈夫です。今は少しでも、主人のそばにいてあげたいんです」と言っていた。
そんな奥さんに対してそれ以上、わたしは何も言えなかった。ただそばで見つめることしか出来ない自分に、悔しさを覚える。