【完結】ドSな救命医に見初められ、婚姻関係を結びました。


「……横井さん。旦那さんはいつ、目を覚ますか分かりません。もしかしたらこのまま……目を覚まさないかもしれません」

 わたしが隣でそう言うと、横井さんは「そんな……」と俯いた。
 
「……だけどわたしは、諦めないです。 横井さんが目を覚ますその日まで、奥さんにまた会える日を夢見ていると思うんです」

 大切な人を亡くした人の悲しみを、わたしは一番近くで見ていたからよく知っている。
 知りたくない感情だ、そんなものは。……だけど人生、そう上手くはいかないものだ。
 何かに囚われて、何かに怯えて生きていくなんてしたくない。 だからわたしは、助けたいんだ。

「だから絶対、諦めません。……横井さんは、わたしが助けます」

 医者は絶対とか、必ずなんて言ってはいけないと言われている。……だけどそれは医者にとっても患者さんにとっても、そしてその家族にとっても必ず救いになる言葉になると、わたしは信じている。
 患者さんを勇気付けることも、それが支えになることもあるのだから。
 【医者が命を救うことを諦めたら、誰が命を救うと言うんだ】……父が昔、そんなことを言っていたのを思い出す。
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