【完結】ドSな救命医に見初められ、婚姻関係を結びました。


「……名前?」

「わたしのこともさくらって呼ぶし、香野茉里のことだって……。名前で呼んだ」

「それは……」
    
 そうだ、わたしたちはお見合い結婚だ。 相手に忘れられない人がいたって、おかしくはなかった……。
 だけどその人が美人で、しかも今をときめく女優となれば、思い出してしまうのは仕方ないのかもしれない……。だってかつて愛していた人だ。
 再会してしまったら、その時の恋心を思い出してしまうのは……自然なことかもしれない。

「……香野茉里のこと、忘れられないんですか」

「違う、そうじゃない!……そんな訳、ないだろ?俺はさくらのことを愛してる」

 北斗さんはそう言ってくれるけど……。
 
「……じゃあ名前で呼ばないで」

「……え?」

「わたしのことを愛してるなら……わたし以外の人を、名前で呼んだりしないでください」

 今思うと、これって……。【嫉妬】というヤツなんだな。 わたしは元カノに嫉妬している。
 仲良さ気に話してたって聞いただけで、嫉妬しているんだ。……惨めで、本当に情けない。
 わたし以外の人を名前で呼んだりしないでなんて、幼稚な嫉妬だ。
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