【完結】ドSな救命医に見初められ、婚姻関係を結びました。
「同じだな、俺たち」
「……そうですね」
わたしたちは夫婦という立場にありながら、同じ救命医という立場にいる。
命を救うという立場になるって、本当に大変で……。時には辛くて、時には残酷で……。悲しくなることも多い。
「命を救うって、簡単なことじゃないけど……。命を救えた数だけ、笑顔や幸せがあるんだなって、わたしは思ってるんです」
「え?」
北斗さんが不思議そうにわたしを見る。
「……わたしがまだ研修医だった頃、初めてわたしが担当した患者さんがいたんです」
わたしの話を、北斗さんは車を走らせながら黙って聞いてくれていた。
「その患者さんは、わたしと年齢が近くて……。わたしにだけは、心を開いてくれたんです。だけどその患者さん、容態が悪化してしまって……。わたし、その患者さんを助けることが出来なかったんです」
「……そうか」
「助けるって言ったのに、助けられなくて……。その時初めて、自分の惨めだと気付いて腹が立ちました。 医者ってこんなに無力なんだと思って、イヤになりました」
あの時、初めてたくさん泣いた。引きずったし、すごく悔しかった。