【完結】ドSな救命医に見初められ、婚姻関係を結びました。
定時になる十五分前、わたしは篠田さんの病室を訪れた。
「篠田さん、失礼します。担当の楠です」
「……ああ、先生ですか」
篠田さんはわたしを見るなり、ちょっとだけ嫌そうな顔をした。
「篠田さん、気分はいかがですか?」
わたしはそう言いながら、篠田さんのモニターをチェックした。
「……まぁ、普通です」
「そうですか。 でも無理はしないでください」
「……はい」
篠田さんはわたしに視線を少し向けた後、そのまま窓の外を眺めていた。
「篠田さん」
「……はい?」
わたしに視線を向けた篠田さんに、わたしはこう切り出した。
「冷房、寒くないですか?」
「……大丈夫です」
篠田さんはわたしから、すぐ視線を逸らした。
「そうですか。……うん、バイタルも安定してますね。 何かあったら遠慮なく言ってください」
「ありがとう……ございます」
篠田さんはわたしにそう呟くと、軽く頭を下げた。
「では、お大事に」
「……はい」
わたしは血圧と体温をカルテを記入すると、そのまま病室を出た。
そして定時になり、そのまま自宅へと帰った。