悪魔と人間
「カレン?」


幸男が目を覚ますとカレンはいなかった。


「カレン?」


寝ぼけたまま頭をかき、部屋の中を見回す。


狭い部屋だ。隠れる場所もない。


何か用事を思い出して帰ったのだろうか? そうだとしても、家もすぐ側なのでおかしくはない。


幸男は大きく伸びをして、背骨を鳴らした。


扇風機の音が耳について、そういえばあれから冷房器具を買い忘れていたと思い出す。


カレンはこの部屋に何の文句も言わない。


せんべい布団の上で抱かれようが、狭い風呂に無理矢理一緒に入ろうが、いつも楽しそうにしている。


もっと大きな部屋へ越したいとも考えたが、いつでも行き来できるこの家の距離は捨てがたい。


「とりあえず、エアコンでも買うか」


そう呟くと、いつも通りにお金の袋が入っている押入れを開けた。


……が、そこには何も入っていなかった。


袋も、もちろん、残りの金もだ。
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