悪魔と人間
「さ、幸男さん。どうしたの?」


すぐにテーブルの上の金を隠して、カレンはいつもの愛らしい笑顔を作る。


けれど、今の幸男にはそれが憎いもの以外何ものでもなかった。


何故笑っていられる? 俺を騙し、俺の金を盗んだのに、何故この女は笑っていられるんだ?


「ねぇ? 今日はどこにデートに行きましょうか」


カレンが、必死に話題を変えようとする。


「そうだなぁ」


幸男はゆっくりと口を開いた。


それと同時に、奇妙な笑みを見せる。


「ゆ、遊園地とかは?」


その笑みに、カレンが後ずさりをしながら続けた。


「いや、もっと楽しい、天国にでも行こう」


そう言うと同時に、手に持っていた包丁をカレンへ振り下ろした。


包丁がカレンの胸に突き刺さる感触がした。


カレンの後ろにいた母親が、悲鳴を上げる。
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