悪魔と人間
☆☆☆

とりあえず札束を袋ごと狭いリビングへと移動し、その中身を一枚一枚確かめていくことにした。


偽物だったり、札束に血痕などがついていたら非常にヤバイ金だ。


さすがにそういうヤバイ金を手元に置いておくのことはできない。


だけど、どちらも違ったら?


札束を念入りに調べながら、ふとそう思った。


全くヤバイ金じゃなかったら、どうする?


ここは自分のアパートだ。


この袋は部屋の中にあった。


誰が置いたのかは知らないが、鍵はキチンとかけてあったので誰も出入りできないハズだ。


だとしたら、この金は?



「俺のものだ……。部屋の中にあったんだから、拾ったわけでもない。だとしたら、全額俺のものだ!」


思わず大声を出してしまい、幸男は慌てて辺りを見回した。


もちろん、誰もいない。


幸男の口元はいやらしいほどに笑みを見せ、これが不幸の第一歩になるとは知るよしもなかった……。
< 9 / 35 >

この作品をシェア

pagetop