幼なじみはトップアイドル 〜ちさ姉を好きになっていいのは俺だけ〜
 彼は、小さいときから、道を歩けば誰もが振りかえる、愛くるしい子だった。
 絹糸みたいに細くて柔らかい髪はくるくるっとカールしていて、ぷくっとふくれた頬っぺたはほんのり桜色。
 
 周りの大人たちも先生たちも、みんな璃音にちやほやした。
 それが璃音のワガママ気質に拍車をかけた、とわたしは今でも思っている。

 そして、はじめて友達と3人で原宿に繰り出した中2の夏休み、竹下通りに一歩足を踏み入れたとたん、スカウトに声をかけられて。

 あれよあれよというまにデビューして、それから6年。日本中で知らない人はいないほどの、超絶アイドルに上りつめた。

 わたしがもしファンのひとりなら、璃音が訪ねてきたというだけで、感激のあまり息の根が止まってしまうかも知れないけれど……

 どれだけすごいアイドルだろうが、わたしにとっては昔からよく知っている近所の子でしかない。
< 12 / 150 >

この作品をシェア

pagetop