幼なじみはトップアイドル 〜ちさ姉を好きになっていいのは俺だけ〜
***

 ああ、だりい。
 早く終わんねーかな。
 もちろん、そんな本心は露ほども見せずに、おれはにこやかにインスタライブに臨んでいた。

『今回のあの雨のシーンは大変だったわね』

 あらかじめ用意されてた撮影裏話をアリサとふたりで、さも、大ごとのように話す。

 こういうライブは出演者のみってことが多いけど、おれたちをふたりきりにするのはまずいと思われたようで、司会役として若い女子アナも出演していた。

『そう。もちろん人工で振らせてるんだけど、そこまで雨量増やさなくてもいいんじゃねってほどでさ。こんな豪雨じゃ、外出られねえだろって、出演者でツッコミ入れてたよね』

『そうそう。あとで衣裳さんが絞ったら、すごい量の水だったみたい』

 “はい、そこで顔を見合わす”とカメラの向こうからカンペが出される。

 ちょっと逆らってやりたくなった。
 おれは知らんぷりして、違う方向を向いた。
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