幼なじみはトップアイドル 〜ちさ姉を好きになっていいのは俺だけ〜
「ちさ姉、あのさ、おれーー」
 璃音が何か言おうとしたとき、わたしたちのすぐ脇を自転車がすり抜けていった。

 もう危ないなあ。
 最近の自転車、ほんとマナー悪い。

「あ、ごめん。なんか言った?」
「いや、なんでもない。そうだ。ちさ姉は……どうなんだよ。好きな奴いるのか?」

 璃音は変装眼鏡の奥から、探るような、睨みつけるような眼差しをわたしに向けた。

 なんか、恋バナっていうより、尋問受けてるみたいなんですけど。

 どうしよう。この年で片思い中なんて言うの恥ずかしいけど。
 まあ、でも相手は璃音だし。
 気取ることはないか。

「いるのはいるけど。でも完璧に片思いだから。成就する可能性はかぎりなくゼロに近い……かなぁ」

 わたしの答えを聞いて、璃音は一瞬、目を見張った。

「えっ、そんなに驚かなくても。わたしだって、好きな人の1人や2人いるよ」
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