幼なじみはトップアイドル 〜ちさ姉を好きになっていいのは俺だけ〜
 もう万事がその調子。
 ほんとに手取り足取り教えないといけなかった。

「おれ、包丁とか使ったことない。調理実習なんてタルかったから、みんな女子にやってもらってた」
 ああ、そういうことね。

「やってみる?」
「やるやる」
「左手、“猫の手”にするって知ってる?」
「こう?」

 璃音はちょっと首を傾げて、ほっぺたの前で手を丸めて、猫のフリ。
 ご丁寧に蕩けてしまいそうな営業スマイルも浮かべている。

「やだ……璃音、可愛い」

 璃音は真顔に戻った。

「なんか知んねーけど、最近、雑誌のグラビアでよくやらされんのよ。猫耳までさせられてさ」
 23の男がすることじゃないよな……
 そう、ちょっと苦々しくつぶやいた。

 そうかな、まだまだぜんぜんイケると思うけど。
< 61 / 150 >

この作品をシェア

pagetop