幼なじみはトップアイドル 〜ちさ姉を好きになっていいのは俺だけ〜
「今日も休みなの?」
「いや、午後から仕事。そうだ。言ってなかった。明日の夜から、撮影でセブ島に行くんだ」

 へえ、そうなんだ……
 じゃあ、しばらく留守ってことか。

「いいなー、きれいなとこでしょ?」
「っても仕事だからさ。遊びに行くんならいいけど」
「いつまで?」
「帰ってくんの、金曜日」
「4泊5日か。けっこう長いあいだ行くんだね」

 ひと月ぐらい、璃音のいる生活が当たり前だったから、なんか変な感じ……

 一瞬、そんなことを思って、目を伏せたら、璃音はすかさず、また例のからかい口調で

「ん? おれがいないと寂しい?」
 
 とか言ってくる。

 ったく。

「もう、そんなわけないでしょ。せいせいするよ。ひさしぶりにひとりで」
 
「そんな可愛くねぇこと言うんなら、土産はなしな」

「えー。ん、じゃあ、寂しい、寂しい。璃音くん、早く帰ってきて」

 おどけるわたしを横目で睨むと

「余計、買う気失せたわ」と頬っぺたを膨らませてる。

 だって、小っ恥ずかしくて言えないよ。
 こうして、ふざけたりできなくて寂しい、なんて。
 そんな、彼女でもあるまいし……

 まだ膨れっ面の璃音はその場に残し、わたしは食べ終えた自分の食器を重ねて、シンクに向かった。
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