幼なじみはトップアイドル 〜ちさ姉を好きになっていいのは俺だけ〜
***

 そして、次の日。
 
 いつもどおりの時間に職場に着いて、璃音、明日、帰ってくるんだなあ、なんてぼーっと考えていたら、経理の神田さんがわたしの席までやってきた。

「ねえねえ、立花さん、知ってる?」 
「なんですか?」
「婚約することになったのよ、先生。稲村ホールディングスの会長のお孫さんと」
「ぅえっ、そうなんですか?」

 のどが詰まったみたいな、変な声になってしまった。
 それに、一気に頭がシャキッとした。


「まあ、時間の問題だとは思っていたけれどね。だいぶお見合いを重ねていらしたみたいだし」

 彼女はそれだけ言うとスッキリしたのか、自分の席に戻っていった。
 そしてまた、来たばかりの人を捕まえて、同じ話を繰りかえしている。

 あと30分もすれば、事務所でこのニュースを知らない人はいなくなるな、きっと。
< 82 / 150 >

この作品をシェア

pagetop